原発規制の指標示す
検証と提言の具体化へ
事業者のいいなり 監視機能の崩壊は明確
東京電力福島第1原子力発電所事故を検証する国会の事故調査委員会(委員長=黒川清・元日本学術会議会長)が5日、最終の調査報告書をまとめ、衆参両院議長に提出した。同報告書の評価や、今後の公明党の対応について、党東京電力福島第1原子力発電所災害対策本部の斉藤鉄夫本部長(幹事長代行)に聞いた。
―報告書をどのように見ているか。
斉藤本部長 政府や東電、民間による事故調査委員会など、それぞれの立場から検証した報告書を否定するものではないが、国会事故調は法律に基づく独立機関であり、国権の最高機関たる国会が国政調査権を付与するなど、重大な責務と権限を有する中、膨大な調査を行ってきた。その結果を集約した報告書であり、一段と重みのあるものだと考えている。
どこにも拘束されない公平な立場から、事故の直接的な原因のみならず、事故に至った法制度の不備や安全文化の欠如、それを招いた政治、事業者の責任に強く踏み込んだということは、特に重要な点だ。
―報告書では特に、政府の事故対応を厳しく断じているが。
斉藤 例えば、原子炉への海水注入の停止の命令が官邸から来るなど、官邸の過剰介入が現場の混乱を招いた。福島第1原発の吉田昌郎前所長が「指示命令系統がムチャクチャだった」と証言したことに端的に表れているように、民主党政権は危機対応が全くできていなかった、能力もなかったということが明らかになった。
また、「規制当局は電気事業者の虜」と指摘するように、規制当局が、コスト増などを懸念し事前の事故対策を先送りする東電の姿勢を黙認。東電や機器を造るメーカーに専門的知識が劣るような事態の中で、規制当局が事業者のいいなりになり、うやむやにされてきたことになる。こうした事実を見ても、規制監視機能の崩壊は明確であり、政府の責任は重大だ。
しかしながら、自公政権時代においても、規制当局の監視体制に不備があったと言わざるを得ず、当然、われわれも厳しく反省し、今後の対応に臨まなければならない。
―報告書の提言では、新規制組織の要件として「独立性」「専門性」「透明性」「一元化」を挙げているが。
斉藤 今回の事故を受けて先日、原子力安全規制を担う原子力規制委員会の設置法が、自公案を軸にして成立している。成立過程の議論で重視した理念は、まさに報告書の提言と一致するものだ。
その意味でも、報告書の提言を踏まえ、これから規制委員会の設置に向け、委員長や委員を国会同意人事で人選するなどの過程をしっかり監視し、国民が安心する規制組織を発足させることが重要だ。
―報告書を受けて党としての今後の対応は。
斉藤 われわれは先日、山口那津男代表を中心に、福島第1原発を視察してきたが、黒川委員長が再三にわたり、「事故は終わっていない」と指摘する通りの実態であった。野田佳彦首相が昨年12月に事故の収束宣言を出したが、全く見当違いであり、被災者とかけ離れた感覚であると言わざるを得ない。
われわれは、事故調の委員の「報告書を出した今日がスタートだと思っている」という言葉と思いを共にし、今後の対応が一層重要になってくるという強い決意で、報告書の内容や提言を具体化していけるように、積極的に努力していく。
国会事故調報告書のポイント
【結論】
・福島第1原発事故はいまだ収束していない
・巨大津波による全電源喪失や炉心損傷は「想定外」ではない
・規制当局と東電の立場が逆転し、監視機能は崩壊。事故は自然災害ではなく明らかに人災である
・安全上重要な機器に、地震による損傷がないとは言えない
・首相官邸の現場介入などで指揮系統が混乱し、危機管理体制が機能せず、被害が拡大した
・住民の避難が混乱した根底には、官邸や規制当局の危機管理意識の低さがある
【主な提言】
(1)国会に規制当局を監視する常設委員会の設置
(2)被災住民の健康と安全を守り、生活基盤を回復する施策の実施
(3)国会主導による電気事業者に対する立ち入り調査権を伴う監査体制の構築
(4)高い独立性や一元化、専門性などを満たす新しい規制組織の発足
(5)国会に未解明部分の事故原因の究明などを調査する民間の専門家による第三者機関の設置
【公明新聞より転載】