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福島第1原発を視察

緊急時対策本部室で説明を受ける斉藤鉄夫
緊急時対策本部室で説明を受けるさいとう鉄夫(左から2人目)

政党で初 住民の不安解消に全力

 公明党の山口那津男代表と井上義久幹事長らは9日、昨年の東日本大震災で事故を起こした東京電力福島第1原子力発電所(福島県)の敷地内を、政党として初めて視察した。事故から1年3カ月を経て実現した今回の視察は、今後の事故対応や原発の新たな安全基準の確立、エネルギー政策の立案などに生かすのが目的。一行は、施設全般の被災状況のほか、作業員の健康管理や安全対策、4号機の使用済み核燃料プールの安全確保策などをつぶさに調査した。

 小雨が降る中、一行はまず、復旧作業の指揮拠点の免震重要棟を視察。緊急時対策本部室であいさつした山口代表は、昼夜を分かたず業務に当たる職員、作業員に敬意を表明。「被災者や国民、世界が注目をする中、共通の目標が達成できるよう、ともどもに頑張っていく」と述べた。

 応対した高橋毅所長は、事故以来、累積被ばく線量が100ミリシーベルトを超える社員が相次ぐ中、作業に従事してきた経緯や、5月から対策本部を放射線の管理が必要ない「非管理区域」として運用していることを報告。また、棟内集中監視室で、現場のモニター画面を見ながら遠隔監視し、安全管理に努めていることなどを説明した。

 その後一行は、防護服を着用し、バスで1号機から6号機の海側を中心に視察。その途中、廃炉に向けた作業が進む4号機の原子炉建屋から約50メートル離れた所で降車。鉄骨が折れ曲がり、事故の爪痕が生々しく残る現場に、全員が息をのんだ。

防護服やマスクを着用し視察に備える
防護服やマスクを着用し視察に備える

 担当者は、4号機の使用済み核燃料プールに耐震補強を行い、震度6強の地震にも耐える安全性が確認されたと説明。原子炉建屋全体を覆うカバーを今夏までに完成させ、来年末までにプール内の燃料回収を開始することなどを報告した。

 さらに一行は、5、6号サービス建屋の緊急医療室で、担当医から作業員の健康管理の状況を聴取。使用済み燃料を保管するキャスク保管庫や、事故対策の初動で冷却作業のために、公明党の提案で投入された生コン圧送機“キリン”などを見て回った。

 視察後、山口代表は「党福島県本部として、県民の不安解消へ適切な情報提供を求めていくほか、党としても県本部と連携を密にとりながら、今後のエネルギー政策全般や原発の新たな安全基準の確立などにしっかり生かしていく」と述べた。

 視察には、斉藤鉄夫幹事長代行や加藤修一、浜田昌良の両参院議員、党福島県議団などが同行した。

山口代表が見解
 公明党の山口那津男代表は9日、東京電力福島第1原発を視察後、記者団に対し次のような見解を述べた。

一、非常に困難な環境の中、昼夜を分かたず作業に従事している作業員、職員の皆さんに感謝したい。その方々の健康管理、安全確保に万全を期す必要がある。
一、作業拠点となる免震重要棟の重要性をあらためて認識した。仮設的な対応で、崩壊を防いだり、冷却装置や循環の水を応急処置するなどしているが、本格的な対応で脆弱性をいかに防いでいくかが重要だと実感した。
一、4号機の(使用済み)燃料プールの燃料棒取り出しは、施設の痛々しい破壊状況からすると、作業工程を前倒しするなど万全な対応が必要だ。福島県民はこの点を非常に憂慮しており、的確・適切な情報を自治体はもとより、被災者、県民に提供していくことが大事だ。廃炉に向けたプロセスも、できるだけ前倒しすることも必要だろう。
一、(首相が大飯原発再稼働を表明したことについて)再稼働の必要性ばかりが強調され、肝心な安全確保の懸念に対する首相の認識、説明は必ずしも十分ではない。今回の首相の説明は、極めて遺憾だ。
一、(再稼働への課題について)暫定的な安全基準ではなく、さまざまな調査結果を踏まえた新しい安全基準を確立し、その上で安全措置を取ることは重要だ。その道筋を欠いたまま再稼働を進めては、国民の信頼に耐えられないだろう。

【公明新聞より転載】