食料品の線引き明確化
消費税率10%時導入に向け 年末までに詳細な制度
自民、公明の与党両党は5日、消費増税に伴い、生活必需品などの税率を低く抑える軽減税率の導入に向けた論点整理を発表しました。その意義やポイントについて公明党の斉藤鉄夫税制調査会長に聞きました。
―論点整理発表の意義は。
斉藤税調会長 軽減税率の実現に向けて一歩前進したことです。昨年末に与党は税制改正大綱で「(消費税)税率10%時に導入する」ことを決めました。来年10月に予定されている10%への引き上げと同時に導入するには、国民の理解を得ながら着実に議論を進めていかなければならず、今回は、その重要な一歩を踏み出したと感じています。
―論点整理のポイントは。
斉藤 対象品目として食料品で8パターン、事業者の納税事務で4パターンの具体案を示しました【図参照】。あらかじめ一つの案に絞らず、複数案の長所と短所を提示することで国民的な議論を盛り上げ、それを今秋からの取りまとめに向けた議論に生かしていきます。対象品目、経理手法ともに公明党は独自案を提唱していますが、撤回したわけではありません。
論点整理の最大のポイントは、生活必需品である食料品の対象を具体的に線引きし、それぞれの減収額を試算した点です。消費税率引き上げ分は全て社会保障制度の安定・充実のために充てられるわけですから、対象の線引きによって、そのための財源がどれだけ減るか、その規模を示しました。
―8パターンの内容は。
斉藤 例えば、全ての食料品を対象とした場合の減収額は、消費税率1%あたり6600億円、公明党が主張してきた「酒、外食を除く食料品」では4900億円と試算しました。また、「コメ、みそ、しょうゆ」の3品目や精米に限った場合の減収額は、200億円です。
―減収分を賄う財源について、どう考えますか。
斉藤 軽減税率の導入で社会保障制度の安定・充実に充てるべき財源が減ってしまうことは許されません。特別にどこからか財源を捻出するよう求める意見がありますが、公明党は消費増税を実施するための法律に低所得者対策の一つとして軽減税率が盛り込まれている点を重視しています。このため、財源は消費増税の体系の中に組み込まれていると考えます。
―公明案では新聞・出版物も軽減税率の対象でしたが。
斉藤 今回の8案は対象を食料品に絞ったものですが、これとは別に社会政策的に配慮が必要な品目もあります。例えば、医療費が非課税になっている措置などです。こうした議論の中で新聞・出版物も軽減税率の対象に加えるよう求めていきます。
―経理手法ではどういった案を示したのですか。
斉藤 軽減税率を導入する上で大きな課題は、事業者の納税事務が増えることです。また、税率が複数になれば、事業者が偽った税率を申告し、益税が拡大しかねません。納税事務では、これらのバランスを考えた議論をしていく必要があります。
軽減税率を導入している欧州各国では、品目ごとに適用税率と税額を記すインボイス(送り状)方式を採用しています。ただ、日本の事業者からは事務負担が重いことから反対の声が根強いのが実情です。
これを踏まえ、公明党は、若手議員を中心に現行の請求書などを生かした新しい経理手法を考案しました。請求書に税率ごとの合計額を示すもので、インボイス方式より事務負担が軽いのが特徴です。今回示した4パターンには、公明案やインボイス方式を軸とした案が盛り込まれています。
―今後の議論のスケジュールは。
斉藤 6月は今回の提案を周知する期間とし、7、8月で各種団体から意見を聞く予定です。その意見を踏まえ、9月から与党間で取りまとめへの議論を開始し、12月に策定する税制改正大綱で結論を記します。大綱には、すぐに法案ができるぐらい詳細な制度設計を書き込み、来年の通常国会での法制定に全力を尽くす決意です。
【公明新聞より転載】