アクティビティ

衆院東日本大震災復興特別委員会で質問

質問する斉藤鉄夫

国民の命守れぬ菅政権

被ばく量低減化に無策
原発事故初動対応 情報発信に混乱、誤り

 31日の衆院東日本大震災復興特別委員会で公明党の斉藤鉄夫幹事長代行は、東京電力福島第1原発事故に伴う子どもの放射線被ばくに強い不安を抱く福島県在住の母親から寄せられた切実な声を紹介。政府が5月17日に発表した「原発事故の収束・検証」と「原子力被災者への対応」に関するロードマップ(工程表)に被ばく量を低減させる具体策が書かれていないことから「菅政権では国民の命と安全を守ることはできない」と批判した。

 これに対し、菅直人首相が「まずは原発事故の収束そのものを何としても実現させたい」などと答えたため、斉藤氏は「事故収束と被災者を安心させることは同時だ」と強調。詳細な放射能汚染マップを作成し、徹底した除染作業に取り組むよう迫った。

 一方、斉藤氏は、学校での屋外活動を制限する目安となる放射線量を年間20ミリシーベルト未満とする暫定的な考え方に関連し、文部科学省が5月27日に「学校で子どもたちが受ける放射線量について1ミリシーベルト以下をめざす」と発表したことに言及。「20ミリシーベルトの大枠を変えず、学校生活での被ばく量を1.7ミリシーベルトから1ミリシーベルトにするだけの話であり、20ミリシーベルトが1ミリシーベルトになったと誤解を与える発表だ」と批判し、「20ミリシーベルトの枠そのものを低い値、1ミリシーベルトにすべきだ」と訴えた。
 原発事故の初動対応に関し、斉藤氏は、現場の判断で継続していた東電福島第1原発1号炉への海水注水が、一度は「中断していた」と誤って伝えられたことについて「なぜ東電(の上層部)は海水の注水を中断することにしたのか」とただした。武藤栄東電副社長は「官邸に派遣されていた者によると、首相の判断がないとできない空気だったと聞いている」と述べ、首相官邸の意向を踏まえた判断だったことを示唆した。
 斉藤氏は菅内閣の一連の原発災害対応について、海水注入の問題や、浜岡原発の停止、原発周辺住民の自主的避難、国民の節電目標など、菅首相が「明確な指示」を出さず、「意向」を伝えるだけで、最終的な決断を自ら下さないことを厳しく批判。「意向だから(政府は)責任を負わない。無責任政治の典型ではないか」と指摘した。これに対し、菅首相は、「海水注入を止めるような要請を出したことは一度もない」と繰り返したが、浜岡原発の停止や自主避難については言及しなかった。
 さらに斉藤氏は、3月12日6時前後には福島第1原発の正門付近で放射線の線量率が急増し、炉心溶融が十分想定されたことを力説し、政府は最悪の事態を想定して避難計画を立て、情報発信をしなければならなかったと主張。「しかし、首相はこの時、(原発の視察で)最も大切な自分の持ち場を離れていた。そこで判断を誤り、ベント(格納容器内の蒸気放出)も遅れ、大きな事態になったのではないか」と強調。「今回の原発災害、初期対応において(政府の)情報の発信、首相の初動対応に大きな過ちがあった」と糾弾した。

【質疑要旨】

「溶融」隠し国民だます
汚染マップ作り除染徹底を
衆院東日本大震災復興特別委員会で質疑する斉藤鉄夫
斉藤幹事長代行 まず福島に住んでいる方からいただいたメールを紹介する。「毎日、放射線に悩まされている。特に土壌汚染によって子どもを外で遊ばせられない。どこが大丈夫でどこが危ないか分からない。不安を抱えたままずっと生活していかねばならないのでしょうか」。
 政府が発表したロードマップ(工程表)を見て、菅首相、菅政権に、この悲しみや恐れが分かっていないと痛感した。できるだけ早く汚染を除去して子どもたちの居場所を取り戻したいということが書かれていない。菅政権では国民の命と安全を守ることはできないとロードマップを見て強く感じた。

菅直人首相 いろんな努力は行うが、基本的には原子力事故の収束そのものを何としても実現させたい。これに向けて政府として全力を挙げている。

斉藤 事故の収束と、被災者を安心していただくことを同時にやらねばならない。除染作業は一切触れられていない。詳細な汚染マップを作り、できるところから徹底した除染作業をしていくべきだ。
 27日に文部科学省は「(学校生活で受ける子どもの放射線量について年間)1ミリシーベルト以下をめざす」と発表した。大枠の(暫定的な考え方の)年間20ミリシーベルトは変えず、学校生活での被ばく量年間1.7ミリシーベルトを1ミリシーベルトにするだけの話ではないか。あたかも20ミリシーベルトが1ミリシーベルトになったという誤解を与える発表だった。

高木義明文科相 暫定的な考え方は変わっていない。ただ、年間1ミリシーベルト以下をめざす可能性は十分あると受け止めている。

斉藤 公明党は引き続き、20ミリシーベルトの枠そのものをもっと低い値、1ミリシーベルトにすべきだと主張していく。

斉藤 海水注水問題について。3月12日、19時4分に海水注入が開始されたのが、5月2日まで2カ月間近く、一切公表されなかった。全ての公式の資料は、「18時、首相、海水による注水を指示」「20時20分、1号機に海水とホウ酸による注水開始」となっている。2カ月間近く一切、公表されなかったのは情報隠しではないか。

海江田万里経産相 「19時4分」は、(5月の答弁の)直前の時点で分かったので、答弁した。

斉藤 重大なことを隠したかったからではないか、と疑わざるを得ない。海江田経産相の5月2日の答弁では、「首相が注水停止を知って、再度、首相から本格的な注水をやれという指示があった」となっている。これは、首相の「中断自体を知らなかったから、止めろ、止めないなんて言うはずがない」との答弁と食い違う。

経産相 私どもは一貫して「(海水を)早く入れて」と言った。何時何分に注水が始まったということは、(当日の)その場では知らなかった。

斉藤 なぜ東電は海水の注入を中断することにしたのか。

武藤栄東電副社長 官邸に派遣されていた者によると、海水注入のような具体的な施策は、総理の判断がないとできないという空気だったと聞いている。

斉藤 それから、実は海水注入を中断していなかった。東電は、全くウソの報告を国に上げたことになるが、責任は誰がとるのか。

経産相 虚偽の報告を今後、絶対しないように、と強く申し渡しをしている。

斉藤 中断していなかったのは技術的には良かったが、政府と東電が一緒になって国民をだましたことは事実だ。
 21日の東電の記者会見では、「海水の注入を首相官邸の意向で一時中断した」と言った。官邸の明確な指示はないが、意向は伝わった。(原発災害対応で)菅首相がとった手法は同じだ。浜岡原発については停止を、東電の賠償問題では銀行に債権放棄を、(原発周辺)20キロから30キロ圏の住民には自主的な避難を、国民には15%を目標に節電を要請する。全て、政府の意向が伝えられ、それに従うかどうかは、中部電力や銀行、住民の判断。政府からの「指示」でなく単なる「意向」。意向だから責任を負わない。無責任政治の典型ではないか。

首相 私が海水注入を止めるような要請を出したことは、一度もない。

斉藤 次にメルトダウンについて。(12日の)6時過ぎにはもう燃料がすべて露出。メルトダウンしたであろうという解析結果が出てくる。
 正門付近の線量率は6時ごろ約100倍に上がっている。最悪の事態としてメルトダウンは十分考えられる。政府は最悪の事態を想定して情報の発信をしなければならなかった。しかし首相はこの時、(原発の視察で)最も大切な自分の持ち場を離れていた。そこで判断を誤り、ベントも遅れ、大きな事態になったのではないか。
 中村幸一郎審議官は「炉心溶融が進んでいる可能性がある」という発言をし、その直後、審議官のポジションを辞めた。細野(首相補佐官)さんは4月3日、「事故発生直後は、炉心溶融、メルトダウンの危機的な状況を経験した」と言っている。政府として、メルトダウンの情報の発信を抑えたことの状況証拠だ。今回の原発災害、初期対応において、情報の発信、また首相の初動対応に大きな過ちがあったと言わざるをえない。

 

【公明新聞より転載】