衆院は1日、本会議を開き、野田佳彦首相の所信表明演説などに対する各党代表質問を行った。公明党の斉藤鉄夫幹事長代行は、東日本大震災の本格復興に向けた第3次補正予算案の提出が遅れた問題について「政府に強い憤りを感じる」とし、復旧・復興の加速を要求。さらに環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題などを追及した。 質問と首相答弁要旨
首相は具体策で「覚悟」示せ
【政治姿勢】 斉藤氏は、首相が所信表明演説で政策の具体策を示さなかった問題に触れ、「強い主体性と責任感ある言葉を避ける(首相の)姿に『覚悟』の度合いが表れている」と指摘。「どこまでも被災者の心に寄り添い、徹底的に情報を開示し、『正しい対応』を率先して具体的に示すことが真の覚悟ではないか」として見解をただした。
野田首相は「政治信念は所信表明で述べた通り、『正心誠意』の四文字だ」と述べた。
【震災復興】 斉藤氏は、本格的な復興のための予算編成が震災発生後から大幅に遅れ、今年度第3次補正予算案の国会提出が10月28日にずれ込んだことに対し、「民主党の政権与党としての自覚、責任感、スピード感の圧倒的な欠如に心からの憤りを感じている」と糾弾。3次補正の速やかな成立と予算執行による本格復興の加速を訴える一方、3次補正後も継続的支援が不可欠な復興対策や原発事故の収束、除染対策などの「国の責任」を明言するよう迫った。
野田首相は「与野党でも議論をいただきながら、具体策を着実かつスピード感を持って実行しなければならない」と述べた。
また、斉藤氏は被災地支援の要となる復興特区法案について、被災自治体が条例で法律上の規制を撤廃できる“法律の上書き”を盛り込むよう要請。復興庁設置法案については、復興基本法に定める復興庁の立法趣旨に沿い、復興事業の企画立案と総合調整だけでなく、実施の権限を持たせることを求めた。
【TPP】 斉藤氏は、今月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でのTPP交渉参加表明をめざす野田政権に対して「議論もなければ、情報開示もない。何より拙速すぎる」と訴え、衆参両院予算委員会での集中審議を要求。野田首相は「与野党の協議を踏まえ対応したい」と答えた。
【社会保障と税】 斉藤氏は、政府・与党が6月にまとめた「社会保障と税の一体改革案」に関して「制度の根幹部分が不明確」と訴え、年金の抜本改革の姿を示すようあらためて求めた。
併せて、安住淳財務相がG20財務相・中央銀行総裁会議で消費税率の引き上げに言及し、関連法案を来年の通常国会に提出すると宣言したことを問題視。「国民的議論の前に国際的に約束することは全く順番が逆で、民主的手続きをないがしろにするもの」と批判した。野田首相は「財務相の発言は、従来の方針を説明したもの」と強弁した。
民主党が2009年の衆院選以降、任期中は消費税率を上げないとしていたことから斉藤氏は「法案を提出した段階で信を問うのが筋」とも指弾した。
【選挙制度】 斉藤氏は「1票の格差」の是正と国会議員の定数削減は喫緊の課題だとして、「選挙制度の抜本改革の中で同時に実現すべきだ。段階論では両方ともできない」と主張。野田首相は「議論によって結論が出たものから改正することも一つの方法論」と答えた。
【安全保障】 斉藤氏は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題について、民主党政権が、移設先の辺野古(同県名護市)案を覆した上で、再び同案へ戻した経緯に言及。「沖縄の頭越しに辺野古回帰を決定し、その後の十分な説明もなく、不誠実極まる対応だった」とし、信頼回復に向けた首相の見解をただした。
野田首相は「沖縄の理解を得るべく、努力していく」と述べた。
【政治とカネ】 斉藤氏は、鳩山由紀夫元首相、菅直人前首相をめぐる不可解な献金や、小沢一郎元民主党代表の資金管理団体による土地購入事件など、民主党代表経験者の相次ぐ不祥事を糾弾。「どれ一つとして国民への誠実な説明がない」として、小沢元代表の証人喚問や、公明党提案の、政治家の監督責任を強化する政治資金規正法改正案の今国会での成立を訴えた。
野田首相は、政治資金規正法の改正について「(民主)党に協議に入るよう指示する」と応じた。
【公明新聞より転載】