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【寄稿文】世界環境デーに寄せて

世界環境デー

 きょう6月5日は「世界環境デー」です。1972年6月5日からスウェーデンのストックホルムで開かれた「国連人間環境会議」を記念して定められた日で、環境保全への関心と理解を深め、積極的な取り組みを推進することを目的としています。

 私たちが住む地球は今、気候変動による脅威にさらされています。

 急速に進む温暖化によって北極圏の氷は溶け、絶滅の危機に瀕している動物もいます。これは遠い世界の出来事ではありません。日本各地でも毎年のように豪雨災害が起きており、自然の脅威はすぐ身近に迫っています。

菅首相の所信表明

 2020年10月、菅義偉内閣総理大臣は、「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」と表明しました。

 この宣言は、菅政権が発足した際に公明党の幹事長だった私が、「日本が温室効果ガスの削減で世界をリードしなければならない」と強く主張し、政権合意に盛り込んだことが背景にあります。

 日本は年間12億トンを超える温室効果ガスを排出していますが、2050年までに、これを実質ゼロにする必要があります。大変な努力を要することですが、脱炭素社会の実現に向けて、必ず達成しなければなりません。そこで、きょうの「世界環境デー」に寄せて、私から所感と提案を述べさせていただきたいと思います。

二国間クレジット制度の促進

 1つ目は、「二国間クレジット制度(JCM:Joint Crediting Mechanism)」を促進することです。JCMとは、先進国の優れた低炭素技術、インフラ技術、省エネサービスなどを途上国に導入・普及し、CO2(二酸化炭素)の排出量の削減分(炭素クレジット)を先進国と途上国の排出削減目標に計上する二国間協定です。

 例えば、ある途上国が火力発電によって、多くのCO2を排出していたとします。日本の技術を導入することで火力発電を減らし、CO2を大幅に削減することができます。この削減したCO2の削減量の一部を日本の削減量としてカウントすることができるのです。低炭素技術の導入にはコストがかかるため、途上国は導入に二の足を踏みがちです。しかし、「二国間クレジット制度」を活用すれば、途上国は低コストで温暖化対策を進めることができます。重要な視点は、CO2削減は一国の問題ではなく、地球規模の課題であるということです。世界各国が協力してCO2を削減しなければなりません。そういった意味において、JCMのさらなる促進が必要だと考えます。

森林の再生

 2つ目は森林の再生です。日本の森林面積は約2500万ヘクタール。これは日本の国土の約3分の2に当たります。日本は森林大国といっても過言ではありません。この森林が光合成をすることでCO2を吸収してくれています。日本のCO2排出量は年間13億トンともいわれていますが、一人あたり10トンものCO2を排出している計算になります。

 私が環境大臣を務めていた13年前、森林のCO2の吸収量は年間6~7千万トンといわれていました。全体の1割に達しないまでも、相当の量を吸収してくれていました。私は今こそ、ここに着目すべきだと考えます。一昔前までは、林業に携わる人が山に入り、森林の手入れをしていたので、常に新しい木々が育っていました。しかし、林業に携わる人が減り、森林が野放しにされたことで、CO2の吸収量が減り続け、今では年間約4千万トンの吸収量にとどまっています。

 林業による雇用創出ができれば、人々は田舎に移り住み、山を再生させることができます。森林がCO2を吸収するこの「森林吸収源対策」で、日本が世界をリードできるのではないかと思うのです。

 さらに、森林の再生にはもう一つのメリットがあります。それは近年、全国各地で頻発している土砂災害を防止できるというものです。樹木の一部を伐採し、残った木の成長を促す「間伐」を積極的に手掛けることで、「災害に強い山」を作ることができるのです。

 公明党は「環境の党」として、これからも政府に対して具体的な提案をしながら、脱炭素社会の実現に向けて全力を尽くして参ります。